2014年8月3日日曜日

オモイデおしえて 005 そかぴさん

今回の思い出は、福岡県文化会館が1985年に県立美術館にリニューアルされて、その一発目の展覧会「現代美術の展望 変貌するイマジネーション」についてです。

寄せてくださったのは、そかぴさん。


 福岡県立美術館の開館時の思い出です。
 開館記念展として「現代美術の展望」が開催されました。最新の美術表現を、福岡県ゆかりのアーティストたちの作品で紹介する展覧会です。公立美術館の開館最初の展覧会において、歴史的作品が一切なく、すべて同時代美術のラインナップで揃えたことに、画期的として大きな注目を集めました。当時は「インスタレーション」がブームになっていました。鉄材やカラフルな紙、あるいはビデオ画面すらパーツとして組み合わされて作品となり、さまざまなインスタレーション作品が3階展示室全体に広がっていました。ダイレクトに作品に接してもらうため、題名や作家名を記したキャプションを、どこにも付けないでおきました。
 開館セレモニーの後、展示室へとエスコートする館長が、招待客に大声で案内しました。「この展覧会ではキャプションをつけていません。この建物同様に新鮮な目で作品に接してください。」開館式典に招かれた人にとっては、作品もそうですが、展示室自体もまさに初めて見る空間。無機的なメタル仕様の円筒型ゴミ箱や、緑のカーペットを張った休憩台なども、じつは備品なのではなく、ひょっとして作品なのではないかと訝る人が続出。「どれが作品なの?」。数日後、館長から「やっぱりキャプションを付けようや」と指示が下りました。
 みんなが福岡県立美術館に対してタブラ・ラサであった30年前の出来事です。


あまりにも詳細でマニアックな思い出とお思いでしょう。それもそのはず、そかぴさんはケンビ開館時(正確には開館準備期)から勤めている学芸員なんです。

そしてニックネームの「そかぴ」とは、ケンビ開館時の喫茶室の名前だとか。そう、逆さに読めば...。ベタすぎるなあ。