2014年8月29日金曜日

オモイデおしえて 006 のっぃさん

本日金曜日。来週の火曜日には長かった半年間の休館も明け、耐震補強工事を施されたケンビが再始動。つまり第70回県展がオープンします。

そして明日は、その県展の入選発表日。きっとドキドキしながら結果を待たれている方も多いことでしょう。

今回思い出を教えてくださった「のっぃ」さんもきっとそのお一人。10年以上県展に出品しつづけてくださっているとか。赤裸々な思い出を語ってくださいました。


 ケンビと出会ったのは平成14年の夏だった。
 その2年くらい前から、先輩に誘われて写真を始めたボクは、この年の県展に初出品して初入選。多くの作品にまざって展示された自分の作品を見に行ったのがケンビデビュー。当時は、ケンビなんて略称はもとより県立美術館であることもよく理解していなかった。須崎公園の奥にある建物。それだけが第一印象。
 それから12年。十二支は一回りしたわけだけどその後、県展には縁がない。どんな自信作を搬入しても、出品されないことを淡々と告げるハガキしか届かない。
 ケンビは敵だ・・・そう思い始めた頃、去年の秋、一枚のチケットをもらった。江上茂雄展。初めて行った県展以外のケンビの企画展。ボクのよく知っている大牟田や有明海の風景が力強く描かれていた。絵画のもつパワーに圧倒された。江上さんの生きざまにも圧倒された。ケンビは素敵だ・・・そう思った。
 その江上茂雄展もひとつのきっかけとなって少しずつ点と点が線になって、いろんなつながりがあって、つい先日ケンビの中の方と飲む機会があった。
 僕はいささか飲み過ぎたようで、何しろ記憶を失うほど酩酊してしまったのだが、聞き及ぶところによると初対面の方々に相当に失礼な振る舞いをしていたらしい。
 自分の点と点が線になってきたことにうかれすぎて、周りの方々が大事にしてきた線を台無しにしてしまったかもしれないとおもうと、今はただ反省するばかり。

 また一回り時が流れるころ、笑って話せる思い出としてキオクされていることを願わずにはいられない。


敵よりも味方がいいですし、無粋よりも素敵がいいです。けれど、無関係、無関心ではなくずっとケンビに関わってくださるのっぃさんは、ありがたい存在です。長くこれからもよろしくお願いしますね。


福岡県文化会館/福岡県立美術館にまつわる思い出や記念写真を募集しています!

2014年8月26日火曜日

「とっとっと? きおく×キロク=」ってどんな展覧会?

昭和39年、開館当初の福岡県文化会館。向かいは前年に開館した福岡市民会館。
現在の須崎公園にはまだ引揚者のための簡易住宅が立ち並んでいる。

福岡県立美術館の前身にあたる福岡県文化会館は昭和39年(1964)に建ちました。ですから今年で50歳。建物は先頃までの半年間におよぶ耐震補強工事を経て、いまも現役です。
この展覧会では、文化会館/県立美術館の50年の歴史を紹介しつつ、「記憶」と「記録」をキーワードにして当館収蔵品と6人の地元作家とがコラボレート。トークがあったり映画上映会があったりと、みんなが楽しめるふところの深い場所をつくっていきたいと思います。


福岡県文化会館建設50年記念 とっとっと? きおく×キロク=
2014104日(土)~1124日(月・休)

休館日:月曜日(ただし10/13, 11/3, 11/24は祝休日のため開館、10/14, 11/4が休館)
観覧時間:午前10時〜午後6時(入場は午後530分まで)
観覧料:一般300円(200円) 高大生140円(100円) 小中生60円(50円)  
*( )内は20名以上の団体料金
65歳以上の方は特別割引料金(200円)
*次の方々は無料=身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方およびその介助者/教員引率による児童・生徒およびその教員/土曜日の高校生以下の方/家族の日(1116日)に来場される方全員



【展覧会内容】

あなたが大切にとっている思い出はどんな思い出ですか?

それは写真や映像にうつっていますか?
あるいは心のなかに残っていますか?
いまは思い出さなくても、いつかふっと再生されるものもあるかもしれません。
なかには思い出したくないものもあるでしょう。

思い出は過去のものですが、わたしたちはいつも思い出とともに歩いています。
急がず、ゆっくりと、どこまでも歩いていけることを願って、この展覧会をひらきます――

とっとっと? きおく×キロク=


◆第1部 思い出の文化会館

福岡県立美術館の前身にあたる福岡県文化会館は、いまから50年前の昭和39年(1964)に建ちました。図書館と美術ギャラリーの併設施設として当時西日本最大の規模を誇り、たくさんの人を迎えてきました。とくに開館後まもなくに開催されたツタンカーメン展は58万人もの来場者を数え、いまも語り草となっています。その21年後の昭和60年(1985)、県文化会館は改築を経て、福岡県立美術館としてリニューアルオープンしました。
1部では福岡県文化会館建設50年を記念して、まつわる記憶や記録を展示し、「きおく」と「キロク」をいまにつむいでいきます。

*福岡県文化会館/福岡県立美術館にまつわるみなさんの思い出を募集しています。詳しくは当館ホームページのココをご覧ください。

文化会館はこちらが正面。設計は佐藤武夫。
建築家自身がデザインした照明の後ろには
洋画家伊藤研之がデザインした石壁レリーフ


◆第2部 まざりあう「わたし」


写真家が目の前の光景をカメラにおさめるとき、それは現実の記録でありながら、写真家の記憶が入りこみます。画家が心の中を描くとき、それは画家の記憶でありながら、画家が生きる日々や時代の記録にもなります。私たちが美術作品を目にするとき、それは同時にわたしたちの記憶を再生し、思い出をつくることがあります。
第2部では、福岡県立美術館の所蔵品と福岡を拠点に活躍中の作家6人(泉山朗土、今岡昌子、酒井咲帆、寺江圭一朗、菱川辰也、森田加奈子)とのコラボレーションにより、「きおく」と「キロク」がまざりあった楽しくふところ深い場所をつくっていきます。 


山本作兵衛「木枯らし」1964-66年、当館蔵 
 (c) Yamamoto Family
髙島野十郎「蝋燭」1912-25年、当館蔵
阿部金剛「Rien No.1」1929年、当館蔵
泉山朗土(タイトル未定)2014年(映像)
今岡昌子「シグナルトランスダクション(変容へ)」2014年(写真)
酒井咲帆「いつかいた場所」(写真)
寺江圭一朗「石職人」2014年(映像)
菱川辰也「市内風景」2013年(絵画)
森田加奈子(左)「アンティエ」2011年/(右)「コイル」2011年(絵画)

*出品作は変更されることもあります



◆第3部 ともに歩いていくために

思い出を杖に歩いていく。そのためにわたしたちはどのように記録と記憶を伝えていくことができるのでしょうか。第3部として出品作家たちによるトークショウや酒井耕・濱口竜介監督『東北記録映画三部作』の上映会などを開催します。

104日(土) 14:00~ オープニング・トーク

出品作家たちが作品や活動について、担当学芸員が展覧会について語ります。

場所:4階展覧会場にて
参加無料(展覧会チケットが必要です)


105日(日) 17:20~ 日比野克彦《 ONE NIGHT A DAY 》公開設置

日比野さんが今から20年前に東京藝術大学大学院の終了制作としてつくった作品を、作家自ら展覧会場で組み上げていきます。
日比野克彦「ONE NIGHT A DAY」1984年、作家蔵
場所:4階展覧会場にて
参加無料(展覧会チケットが必要です)


『東北記録映画三部作』上映会

1)1025日(土)13:00~17:30 
第一部「なみのおと」(142分)、第二部「なみのこえ/気仙沼編」(109分)

2)1026日(日)13:00~17:00 
第二部「なみのこえ/新地町編」(103分)、第三部「うたうひと」(120分)

場所:4階視聴覚室にて(開場は12:30/先着80名程度) 
参加費:各日500円 
特別協力:silent voice http://silentvoice.jp/


113日(月・祝)14:00~ とっとっトーク

文化会館/県立美術館の開館記念日であるこの日に、田北雅裕さん(九州大学専任講師/http://trivia.gr.jp/ )や出品作家たちといっしょに「記憶」「記録」「思い出」「希望」「未来」などについて語り合いませんか?

場所:4階視聴覚室にて(開場は13:30/先着80名程度) 
参加無料



2014年8月8日金曜日

キロクの断片のきおく 008

満を持して登場の、ツタンカーメン展(昭和40年)の記事紹介。いくつもあったのですが、個人的に一番ヒットしたのはこの記事です。

朝日新聞 昭和40年12月14日
「食堂も大繁盛」とあります。そりゃそうでしょ、40日間で約59万人も入った展覧会ですからね、食堂もさぞかし儲かったでしょ。

と記事をよく見れば、なんとお向かい福岡市民会館の食堂だとか。文化会館にも食堂はあったんですけど、全然入りきらなかったんでしょう。

いまも市民会館に芝居やコンサートを観に来られた方が開場までケンビの1階でくつろいだりトイレで大行列をつくったり(笑)されているのと変わらず、昔からお向かい同士で支え合っていたわけです。

カレーと丼ものがよく出たそうで、食堂の「上田さん」のコメントが秀逸。「美術展のお客さんなのではじめはかなり高いものが売れるという心づもりでしたが、ツタンカーメン展はどうやら庶民の展覧会ですね」と。

かくして最終日の1月15日も「庶民」は入場前の大行列。

朝日新聞 昭和41年1月15日
ありえない眺めですね。

2014年8月3日日曜日

オモイデおしえて 005 そかぴさん

今回の思い出は、福岡県文化会館が1985年に県立美術館にリニューアルされて、その一発目の展覧会「現代美術の展望 変貌するイマジネーション」についてです。

寄せてくださったのは、そかぴさん。


 福岡県立美術館の開館時の思い出です。
 開館記念展として「現代美術の展望」が開催されました。最新の美術表現を、福岡県ゆかりのアーティストたちの作品で紹介する展覧会です。公立美術館の開館最初の展覧会において、歴史的作品が一切なく、すべて同時代美術のラインナップで揃えたことに、画期的として大きな注目を集めました。当時は「インスタレーション」がブームになっていました。鉄材やカラフルな紙、あるいはビデオ画面すらパーツとして組み合わされて作品となり、さまざまなインスタレーション作品が3階展示室全体に広がっていました。ダイレクトに作品に接してもらうため、題名や作家名を記したキャプションを、どこにも付けないでおきました。
 開館セレモニーの後、展示室へとエスコートする館長が、招待客に大声で案内しました。「この展覧会ではキャプションをつけていません。この建物同様に新鮮な目で作品に接してください。」開館式典に招かれた人にとっては、作品もそうですが、展示室自体もまさに初めて見る空間。無機的なメタル仕様の円筒型ゴミ箱や、緑のカーペットを張った休憩台なども、じつは備品なのではなく、ひょっとして作品なのではないかと訝る人が続出。「どれが作品なの?」。数日後、館長から「やっぱりキャプションを付けようや」と指示が下りました。
 みんなが福岡県立美術館に対してタブラ・ラサであった30年前の出来事です。


あまりにも詳細でマニアックな思い出とお思いでしょう。それもそのはず、そかぴさんはケンビ開館時(正確には開館準備期)から勤めている学芸員なんです。

そしてニックネームの「そかぴ」とは、ケンビ開館時の喫茶室の名前だとか。そう、逆さに読めば...。ベタすぎるなあ。