2014年9月18日木曜日

オモイデおしえて 007 市川直代さん

朝日新聞(昭和40年12月3日)より

今回思い出を教えてくださった市川直代さんは63歳の女性。美術館デビューはもちろん文化会館のツタンカーメン展。

小倉で生まれ、小倉で育ちました。中学3年(昭和40~41年)の冬、高校受験の合格祈願に学校から3年生全員(約630人)で太宰府天満宮に参拝、その後県文化会館で開催中の「ツタンカーメン展」を見に行きました。黄金のマスク、数々の宝飾品、そして美術館という空間に驚きました。「ツタンカーメン展」はわたしの美術館デビューでした。

高校生になると友人とユトリロ、モディリアーニ、ロートレック、ルノワールと展覧会があるたびに見に行きました。

見終わると天神へ。福ビルの「ニック」に行き、いつかはこんな生活をと思い、1階の「とうじ」で手の届く絵葉書を買い、地階の「ロイヤル」でカレーライスを食べ、大満足で小倉に帰りました。青春の入口の良き時代の思い出です。


淡々と語ってくださった思い出が、それだけにしみじみ染みてきます。「ニック」や「ロイヤル」の名前も出てきて、古き良き天神を謳歌された世代ですね。

私が福岡に暮らすようになったのが2000年、来た時にちょうど「ニック」は無くなっていて、後でその名前を知りました。ニックの思い出を語る人に会うと、うらやましいなあという思いと、くやしいなあという思いとが交錯します(笑)

思い出が私自身のなかにないからこそ、そこはいつまでも憧れの場所として心のなかに在りつづけるのでしょう。